実際に働いてみて感じた、メリット・デメリットを紹介しますね。
この記事でわかること。
- 訪問看護師のメリット・デメリット
- 訪問看護師の勤務
訪問看護師としての働き方には、病棟看護師とは違うメリットがいくつもあります。その反面、デメリットもあります。
外科病棟での3年勤務を経て訪問看護ステーションに異動した私が、実際に働いてみて感じたことをお話します。
訪問看護師のメリット
お一人お一人の患者さんに、じっくり向き合える
病棟看護では、複数の患者さんを受け持つ中で同時進行で業務が進みます。そのため常に多重課題を抱えており、「もっと時間をかけてケアしてあげたいけど、今日は時間がないな・・・。」と感じながら働くことが多々あります。
訪問看護は、1回あたり30~90分の決められた時間の中で、お一人の患者さんだけにケアを行うことができます。訪問中はその患者さんだけに集中できるため、よりお一人お一人に寄り添った看護を行うことができます。
時間オーバーにならないように、その患者さんだけのタイムスケジュールを考えておくことが大切です。
様々な分野の知識が身につく
訪問看護を利用している理由はその患者さんによって様々です。
例えば
〇高血圧症や心疾患の既往歴があり内服治療中だけど、高齢夫婦のみの世帯だったり高齢独居ため内服管理が必要な方。
〇人工肛門を造設し、皮膚トラブルの観察や装具使用状況の継続的なアセスメントが必要な方。
〇在宅中心静脈栄養法をしており、点滴やCVポート針の交換または家族への指導が必要な方。
〇在宅酸素療法や人工呼吸器を使用しており、継続的な呼吸状態のアセスメントが必要な方。
〇在宅で終末期を過ごすため、患者さんならびにご家族へのケアが必要な方。
等々、ここでは書ききれません。全ての診療科が対象になりうるため、幅広い経験が積め、様々な知識が身につきます。
在宅医療で頻度の高い処置や医療機器は、事業所によってマニュアル化されていることが多いので、未経験でも安心です。
これまで身につけた知識・技術で無駄になるものがない
前述したように、患者さんの訪問看護利用目的は人それぞれです。それに加えて、お一人お一人で生活スタイルも異なるため、考えていることが違えば抱える疑問も様々です。
患者さんやご家族が抱く悩みや疑問は、必ずしも主科に限ったものだけではありません。
例えば
〇呼吸器科にかかっているけどお腹の調子が気になる、食べ物は何がいいんだろ。
〇外科でお腹の手術をしたけど、最近動悸がしやすくて気になっている。
〇整形外科しかかかったことないけど、最近足がむくみやすくなった気がする。おしっこも少ない。
などなど、主科に関することだけでなく、様々な悩みをお持ちのことが多いです。
これまでの経験から、何かしらの助言が思いつくはずです。看護師としてまだまだ未熟と感じていても、患者さんやご家族にとっては貴重な情報となることがあります。
訪問看護は要求されることが多岐にわたりますが、これまでの看護経験がヒントになることも多いので、それを活かせるのが面白味の1つです。
ワークライフバランスの調整がしやすい
病棟勤務では基本的にシフト勤務で、さらに夜勤が続いたりすると疲れがたまる、友人との予定も合わせにくいという悩みを常に抱えていました。
本門看護は、事業所によりますが土日祝は休みのステーションが多いです。
勤務は月~金の日勤で夜勤はなく、オンコールはありますが当番制のため月に数回程度の頻度です。
そのため休日の予定が組みやすく、仕事とプライベートの両立がしやすいです。
また突発的な残業も少ないため、就業後の予定も組めたりと、時間を有効活用できることが増えました。
時間に余裕ができた分、これまでできていなかったことに取り組んだり、新しい趣味に挑戦したり、アクティブ過ごすこともできます。
休日の取り方は事業所によって異なるので、事前に確認することが重要です。
ナースコールが鳴らない
これが割と大きなメリットかなと感じています。
私がいた外科病棟では、OPE後の患者さんから緊急入院後の患者さん、終末期にある患者さんなど様々な方が入院生活を送っていました。そのため、(誇張なく)1日中ナースコールが鳴り響いていて、帰宅後も耳鳴りのように、ナースコールが聞こえているような気がすることもありました。
訪問看護では、もちろんナースコールはありません。
電話での問い合わせや緊急電話はありますが、事務関係の連絡であれば事務員さんが対応してくれたり緊急電話はない日が多いので、病棟に比べれば心労は圧倒的に少ないです。
ナースコールに対応しきれなくてイライラすることもあったので、それがなくなっただけでも訪問看護師になったメリットは大きいと感じています。
訪問看護師のデメリット
オンコール対応がある
訪問看護は夜勤がないかわりに、オンコール対応があります。
オンコール対応とは、24時間対応体制加算を契約している患者さんまたはその家族から、勤務時間外に電話連絡があった際に対応することです。当番制で専用の電話を持ち帰り自宅で待機することになるため、休日でも拘束されることになります。
オンコール当番は月に5~7回ほどあり、緊急訪問が必要になるのは患者さんの状態によります。終末期の患者さんを多くかかえていたり、ストーマトラブルなどが起きやすい患者さんがいる場合には、月に複数回緊急訪問することがあります。
時間に関係なく緊急電話がかかってくる可能性があるため、深夜に対応しなければいけないこともしばしば。
むしろ夜勤より辛いと感じることもあると思います。
深夜に緊急対応した翌日は休日になるか半休をもらえるかなど、その扱いは事業所ごとに異なるので確認が必要です。
またオンコール当番手当も事業所によってかなり差がありますので、事前に確認することをお勧めします。
オンコール対応をしない事業所もあるので、自分の働き方に合わせて事業所を選ぶことが大切です。
給与が下がる可能性がある
訪問看護師の平均年収は約400万円前後と言われています。オンコール対応がある分、手当が充実している事業所では給与が高くなる場合もあります。逆に手当の額少ない場合には、転職や異動をした際には給与が大幅に下がる可能性があります。
私の場合、院内異動で訪問看護師になりました。オンコール手当が微々たるもののため、異動後の初給与は、病棟時代の給与から夜勤手当がゴッソリ引かれただけの金額になってしまいました。月収でいうと6~7万円ほど、年収では70~80万円ほど下がってしまったことになります。
基本給や各種手当、賞与などについては事業所ごとに差が大きいので、十分に確認する必要があります。
その場でのアセスメント力が求められる
訪問看護は、独り立ちしたら基本的には一人で訪問します。
患者さんのバイタルを測定して、全身観察をして、生活の様子を聞いて。異常の有無や治療の必要性など、その場でアセスメントして助言をしなければいけません。
その場で上司や先輩に電話相談することも可能ですが、訪問時間内に行動して問題を解決しなければいけないため、高度なアセスメント力や判断力が求められます。
場合によっては病棟看護より緊張感を強く抱くこともあるかもしれません。
患者さんの状態変化に対応できるよう、事前の情報収集と対応方法のパターンをいくつか考えておく必要があります。
経験できる看護技術が限られる
病棟であれば毎日のように採血や各種注射、点滴の交換、処置の介助などがあり、様々な看護技術を経験する機会が多くあります。
訪問看護では、採血することはほぼなく、抹消静脈路の確保なんて久しぶりすぎてできるかな?って感じるほどに機会がありません。
高カロリー輸液や在宅化学療法での点滴管理、吸引や人工呼吸器管理、ストーマ管理など、行われる医療行為はある程度決まっているため、病棟よりも経験できる手技は限定的になります。
限定的といっても、上記のように複数の専門的な医療行為の管理を担うため、経験の浅い看護師だとはじめは大変かもしれません。
注射業務をどんどんこなしていきたいと考えている方は注意が必要です。
患者さんのことを覚えるまでが大変
1つの事業者が契約している患者さんの数は、約50名ほどです。人数だけみれば病棟とさほど変わりはないと感じますが、大変なのはそこにそれぞれの生活環境が影響しているという点です。
病院では患者さんが、病院のルールに従って生活を送ります。
在宅では看護師が、それぞれのお宅のルールに従って行動しなければいけません。
例えば
〇訪問前に必ず連絡が必要な方。
〇玄関では靴を左に寄せて、スリッパは左から使って。
〇洗面台で手を洗う時は蛇口の向きを変えないで。
〇患者が認知症で落ち着かなくなるから、「トイレ」と「体操」の話はしないで。
などなど、本当にいろいろなお宅ルールがあります。
もちろん、既往歴やこれまでどんな治療を受けてきたのか、訪問看護を利用した経緯などの情報も把握しておく必要があるので、はじめのうちは患者さんの顔と名前とルールがごちゃごちゃになって大変でした。
お宅への道順を覚えるのも大変でした。自分なりに目印を見つけて覚えていく必要があります。
まとめ
今回は訪問看護師のメリット・デメリットについて紹介しました。
病棟看護とは異なる点が多い訪問看護。
特に病棟看護師から訪問看護師への異動・転職した場合には、戸惑いや不安は大きいと思います。
それでも、訪問看護師になって良かったと感じる部分がいくつもあります。
近年は地域包括医療が注目され、今後も在宅医療への需要は高まることが予想されています。
自分に合った働き方を求めて、訪問看護師を一つの選択肢としてみてはいかがでしょうか。
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