この記事でわかること
- 看護師になるための学校の種類と特徴
- 学校選びのポイント
看護師になるためには
看護師になるためには、看護師免許を取得する必要があります。看護師免許を取得するためには、大学または看護師養成所(専門学校など)を卒業し、看護師国家試験に合格しなければいけません。
看護師国家試験は毎年2月中旬頃に行われ、全国12~13の都道府県で開催されます。令和5年2月12日に行われた第112回看護師国家試験では、受験者64,051人に対して68,152人が合格し、合格率は90.8%でした。これは既卒者も含まれた数値で、新卒者だけを見ると58,911人が受験し56,276人が合格しており、合格率は95.5%になります。合格率はその年によっても変動しますが、概ね例年90%前後で推移しています。
(出典:厚生労働省「第109回保健師国家試験、第106回助産師国家試験及び第112回看護師国家試験の合格発表」)
看護師になるための学校は?
看護師になるための学校は以下の4種があります。
- 4年生の大学
- 3年生の短期大学
- 3年生の看護師養成所(専門学校)
- 5年一貫看護師養成課程校
4年生の大学
4年生の大学は、4年間をかけてじっくり看護技術や知識を習得することができます。3年生の短期大学や看護師養成所よりも1年長い分、病院実習もある程度余裕のあるカリキュラムが組まれているため、無理なく学習の計画を立てることができます。
大学の講義は、看護学部だけでなく他学部の講義を選択して受けることができるのも特徴です。例えば経済学や経営学、中国語やフランス語といった語学など多岐にわたります。選択科目は自分で時間割を組むことができるので、うまく単位を取得できれば、空き時間を作りながら学校生活を送ることができます。
また在学中に、保健師もしくは助産師の国家試験受験資格を得ることができます。他にも大学院への進学資格も取得できるため、将来的に専門看護師への挑戦などキャリアアップを目指したい方にはメリットが多いです。
3年生の短期大学
3年生の短期大学は、4年生大学と同じように一般教養を身に着けながらも、1年早く看護師として従事することができます。大学によっては、近隣の4年生大学の講義を受けれるような提携をしている場合もあるため、様々な知識を習得することができます。「色々なことを勉強したい。でも早く働きたい。」という方には合っているのではないでしょうか。
3年生の看護師養成所(専門学校)
3年生の看護師養成所は、実技習得に重きを置いたカリキュラムが組まれています。3年間という期間で必要な学習を行うため、授業・実習はかなりタイトなスケジュールで進みます。特に2年次になると、実習をこなしながら途中の登校日にテスト、ということもあるため、実習準備からテスト勉強など大変だと感じる方が多いです。その分、間をあけることなく実習に取り組めるので、看護技術については大学よりも集中的・効率的に習得することができます。
また学費が4年制大学よりも安いため、費用を抑えながらしっかり技術習得することができるというメリットがあります。ちなみに、日本看護協会の「2021年 看護職員実態調査」では、3年生の看護師養成所を卒業している看護師が全体の52.2%と最も多い結果となっています。
5年一貫看護師養成課程校
5年一貫看護師養成課程校は、3年間の高校看護科と2年間の看護師養成所を経て、看護師国家試験受験資格を取得します。4年生大学や3年生の短期大学・看護師養成所は、いずれも高卒以上が受験資格なっています。中学在学時に看護師を目指している方にとっては、高校入学時から看護師になるための学習を開始でき、現時点では最短で看護師国家試験受験資格を得る方法が、この5年一貫性看護師養成課程校です。
2022年10月20日時点で、5年一貫看護師養成課程校は全国に79校あります。全都道府県にあるわけではないため、進学を検討している場合は、学校の所在地は十分調べる必要があります。
(出典:厚生労働省「医療関係職種養成施設」)
学校選びで重要なポイント
自宅から学校までの距離
毎日通う学校は、なるべく自宅から近い方が良いと考える方も多いのではないでしょうか。看護学校では通常の授業だけでなく、校内で実習のシミュレーションを行う「校内実習」という授業があります。1限目から校内実習がある場合、いつもより早めに登校してナース服に着替えたりと、準備することがあります。少しでも自宅から近い方が、余裕を持って学校生活を送ることができます。
実習先の病院
実習先の病院は学校ごとに異なります。実習は領域別に複数の病院に行くことになり、自宅から近かったり逆に遠かったりします。実習での単位取得は休まず行くことが最重要です。毎日レポートや次の日の準備に追われるため、少しでも通院時間は短い方が良いです。
また就職したい病院が決まっている方や気になる病院がある方は、その病院が実習先になっていれば学びながら病院の様子も見れて一石二鳥になります。
実習先病院は、それぞれの学校のホームページなどで公開されていることが多いため、調べてみることをお勧めします。
学費
学費は大学か看護師養成所か、また公立か私立かで大きく変わります。
●4年制大学
・公立:約300万円前後
・私立:約500万円~800万円前後
●3年生看護師養成所
・公立:約100万円前後
・私立:約300万円前後
上記の金額はあくまでも目安ですが、その差はかなり大きくなります。なるべく学費を抑えたいという方は、3年生の看護師養成所を第一候補にしてみてはいかがでしょうか。
奨学金制度、専門実践教育訓練給付制度などが利用できるか
少しでも学費の負担を抑えたいと考えている方は、奨学金制度や専門実践教育給付制度などの制度を使ってみてはいかがでしょうか。日本学生支援機構が運営するJASSO奨学金や、民間育英団体が設けている奨学金などはよく耳にするのではないでしょうか。ここでは指定された看護学校のみで利用できる制度をご紹介します。
看護師等修学資金貸与事業
看護師等修学資金貸与事業は、各都道府県が運営する奨学金制度です。各都道府県により条件は様々ありますが、例えば東京都の場合、貸与金額と返済については以下のような条件を設けています。
- 貸与金額は、25,000円、50,000円、75,000、100,000円のいずれか1口。
- 貸与期間は正規の修行年数。
- 無利子。
- 返済方法は月賦、半年賦、一括払いのいずれか。
- 都内施設または指定施設に5~7年(貸与額により異なる)従事することで返済は免除となる。
基本的には指定されている「都内施設」と「指定施設」への就職が前提となる制度ですが、東京都の場合は指定外の施設や病院に就職する際にも利用することができます。この場合、免除を受けることはできませんが無利子で貸与を受けることができるのは変わりません。
例えば3年生の看護師養成所で毎月25,000円の貸与を受けた場合、3年間の貸与額は25,000円×36か月=900,000円になります。25,000円のコースの場合、貸与期間と同期間内に返済すれば良いので、月賦であれば毎月25,000円を36か月で返済すれば良いということになります。
民間の育英団体による奨学金や日本学生支援機構による奨学金は、条件によっては有利子になる場合があるため、無利子で貸与を受けることができるというのは大きなメリットになります。
専門実践教育訓練給付制度
専門実践教育訓練給付制度は、社会人を経て看護師を目指す方が利用可能になる場合がある制度です。一定の要件を満たす方が、厚生労働大臣の指定する専門的・実践的な教育訓練(専門実践教育訓練)を受講し、修了した場合に本人が教育訓練施設に支払った訓練費用の一定割合を支給する制度です。
給付される金額は以下のようになります。
- 訓練経費(学費や教科書代)の最大50%(年間上限40万円を6か月ごとに支給)。
- 看護師免許取得後、訓練修了の翌日から1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された方は、訓練経費の20%(年間上限16万円)を追加支給。
つまり、最終的にかかった学費の70%が返ってくるという制度です。またこの制度を受けるための条件は以下です。
- 雇用保険の被保険者資格を喪失した日以降、受講開始までが1年以内の方。
- 受講開始までの雇用保険被保険者期間が3年以上(初回の方は2年以上)の方。
- 当該の大学または看護師養成所が、厚生労働大臣による専門実践教育訓練講座の指定を受けていること。
この制度を利用するためには、進学を検討している学校が専門実践教育訓練講座の指定を受けている必要があります。この指定講座は年に2回更新されるため、最新情報を調べてみることをお勧めします。
学校選びには直接関係しませんが、専門実践教育訓練を受講する45歳未満の離職者のうち、一定要件を満たす方は教育訓練支援給付金制度を利用することもできます。教育訓練支援給付金制度は、離職直前の6か月で受けた給与を合計し月平均した金額の80%を、訓練受講中の2か月ごとに受け取ることができる制度です。この制度も利用することで、在学中の生活資金を確保することができます。
募集定員と男女比
募集定員は、4年生の大学も3年生の看護師養成所も約80~100人前後のところが多いですが、その男女比はかなり差があります。例えば同じ系列の看護師養成所であっても、募集80人に対して男性が3人だけの学校があれば、80人に対して20人の男性を募集している学校もあります。
受験生の男女比が学校によって同じであるならば、男性の募集定員が少ないということは単純に男性にとっては倍率が上がることになるので、合格するのが難しくなります。看護師になるためには学校に入学にすることが最低条件のため、まずは学校に合格しなければ始まりません。
この募集定員における男女比は、全ての学校が公表しているわけではありませんが、ホームページやパンフレットに記載されていることがあります。少しでも合格率を上げたいという方は、是非一度調べてみることをお勧めします。
入学者数と卒業者数から見る、卒業率
入学者数や卒業者数は、学校のホームページやパンフレットに記載されていることがあります。
例えば入学者数80名の学校がA校、B校の2校あったとして、その卒業者数がA校は79名、B校は72名だったとします。これはA校では1名が、B校では8名が卒業できなかったということになります。B校においては卒業率90%と、数値だけ見ると高いように感じますが、80名のうちの10%が卒業できないと考えると、あまり楽観視できません。
卒業できなかった理由は、単位が足りずに留年してしまったり、授業や実習の大変さについていけず自主退学したりなどが考えられます。家庭の事情などでやむを得ない場合もあるため、一概には言えませんが、例年多くの留年者・退学者を出している学校には注意が必要です。もしそのような統計資料を目にした場合は、口コミなども調べてみて、実際に通っていた方の声を聞いてみることをお勧めします。
看護師国家試験合格率と就職率
「看護師になるためには」の項で説明したように、現役生の看護師国家試験の合格率は約95%あります。学校ごとに前年やそれまでの看護師国家試験合格率を公表していることがあります。上記の平均合格率を下回るような数値を公表している学校は目にしたことはありませんが、98%や99%などの高い数値を記録している学校もあります。こういった学校は、受験対策のヒアリングや講義を早期から取り組んでいたり、有名な病院から医師が講義をしに来ていたりと、看護師国家試験対策を積極的に行っている場合があります。
就職率においても同様に、高い数値を記録している学校では実際に病院の看護師や採用担当者を招いて合同説明会を開催したり、就職試験に向けた個別面談や履歴書の書き方指導、模擬面接をしたりと早期から就職活動対策に取り組んでいることがあります。
看護師国家試験の合格率や就職率は、最終的には個人の努力や力によるところが大きくなりますが、個人が調べられる情報には限界があります。そんな時に学校のサポート体制が厚いと、肉体的にも精神的にも辛い時期に心強い味方だと感じれることでしょう。
まとめ
看護師国家試験の受験資格を得るための学校についてご紹介しました。
- 看護師になるためには看護師国家試験に合格し、看護師免許を取得する必要がある。
看護師国家試験を取得するための学校は
- 4年生の大学
- 3年生の短期大学
- 3年生の看護師養成所(専門学校)
- 5年一貫看護師養成課程校
学校選びのポイントは
- 自宅から学校までの距離
- 実習先の病院
- 学費
- 奨学金制度、専門実践教育訓練給付制度などが利用できるか
- 募集定員と男女比
- 入学者数と卒業者数から見る、卒業率
- 看護師国家試験合格率と就職率
コメント